V・K・アルセニエフ展
平成15年度
アルセニエフ展 開拓記念館食堂で行われた展覧会祝賀会
展覧会開会式、開拓記念館行動で行われました。 開会式に参列の方々
式後の歓談
エレナ、オリガ両女史の講演 映画『デルス・ウザーラ』の解説と講演、野上照代氏

  「アルセニエフ」

 20世紀初頭の沿海州は、ロシアにとっては中国、朝鮮と国境を接する極東経営の重要な拠点であり、大陸進出を目指す日本にとっても明治初期から多くの日本人商人たちがこの地に進出していた事情もあり、東アジア外交上注視すべき土地であったといえる。
 だが、この時代の沿海州地方はまだ探検や学術調査が十分ではなく、地図も空白の未知の部分が多い状態にあった。
 このようななか1900年にウラジオストク部隊に赴任したX・Kアルセニエフは、1902年から1910年にかけて沿海州全域の探検を行い、この地方の開発の基礎を築いている。
  なお、1902年の探検で出会いその後の探検と、彼の人生に大きな影響を与えたのが先住民ナナイの猟師デルス・ウザーラであり、この探検の経緯は彼の著作『デルス・ウザーラ』や『ウスリー地方探検記』などに発表されている。
 アルセニエフの探検及び学術調査はその後もロシア極東各地で行われたが、彼の業績は世界的に評価され、日本でも昭和10年代から『デルス・ウザーラ』などの著作が翻訳出版されて話題となり、また、昭和50年(1975年)には黒澤明監督によるソ連、モスフィルム作品の映画『デルス・ウザーラ』が作られている。
 アルセニエフが1902年に行った沿海州の探検で、デルス・ウザーラに出会ってから100年を過ぎた現在、このような歴史の多くは忘れられている。だが、新しい日露両国の交流の構築が望まれる今日、道民がロシア極東の歴史や文化、さらに日露両国の交流の歴史を認識することは極めて大きな意義があると考えられる。当協会ではこれまでロシア極東地域の博物館と研究交流を行い、その成果を『20世紀夜明けの沿海州』(北海道新聞社刊)として2000年に刊行しており、これについで2003年には実物資料や貴重な古写真などを使用し特別展を開催しようとするものである。(会誌16号より)